紳士的なLady*Another
何で私、泣いてるの?
最初から、面白半分だったじゃない。
振られたのが、そんなに嫌だったの?
違うでしょ?
必死に言い聞かせようとしても、流した涙を止めることは難しいこと。
そのまま、とぼとぼと廊下を歩いてた。
その時だった。
「ごめんって!剣ちゃん!」
階段を走りながら降りてくる男子生徒を見た。
軽そうな人。
私の横をスルリと抜けていき、真っ直ぐな廊下の奥へ、奥へと走っていった。
再度、手の甲で涙を拭うと、また一人、誰かが来た。
背の高い、長い黒髪の子。
「剣ちゃん、小野寺くん、逃げちゃったよー?」
後ろから出てきたのは、友達らしき女の子。
肩までの髪を揺らしながら、困った顔で笑っている。
「小野寺が私の教科書……。え?」
彼女は今、私に気が付いたみたいだ。