紳士的なLady*Another
「えっ?あ、あの……!ごめんなさい、びっくりさせちゃった?」
泣いている私を見たからか、少しだけ慌てている。
「大丈夫です……。気にしないでください……」
それだけ言うと、私は足早にその場を後にしようとした。
けど。
「羽賀さん、だったよね?」
その子の口から、私の苗字が出てきた。
何で、この人知ってるんだろう。
先輩じゃないの?
私が混乱しているにも関わらず、彼女はゆっくりと近づいてくる。
「えーっと……。私、同じクラスの満原剣です」
差し出された綺麗な右手。
それを見た瞬間、視界が潤んでいく。
「……ちょっと、話さない?」
これが、彼女なりの察し方なのか。
分からないまま、並んで歩きだした。