のらねこ様、カレシ仕様
「だっ、・・・ダメェ――――――――ッ!!」
悲痛な叫び声を聞いた時には、拳が何かを叩いていた。
柔らかいこれは・・・
ナニ?
スツールをなぎ倒し、カウンターに叩きつけられたのは―――
「っ、ヒナ!!ヒナタッ!」
番犬が叫んで飛びつく。
泣きだした小型犬も駆け寄って。
あっという間に黒集りになって行く様を、俺は茫然と見詰めていた。
「救急車呼ぶか?」
「・・・いじょ、ぶ、です。」
烈やレージも加わって、人だかりの向こうから弱弱しく応えるヒナタの声。
病院行くって、烈が車出すって、番犬がヒナタを抱えてくまで、
あっという間。
ヒナタは苦しそうに奥歯噛み締めて。
青い顔してんのに、汗滲んでて。
拳に手ごたえないほど柔らかい感触が蘇り、背筋に冷たいモノが奔った。
俺、
ヒナタ、
殴った。
身体から力が抜けて、気が付いたら震える拳を握りしめたまま、床に座りつくすしか出来なかった。