君だけに夢をもう一度 ~完結編~
「ねえ、おじさん。お母さんの初恋の人って、おじさんなんでしょう?」

「えっ! 」
栞が、突拍子もないことを言ったことに、正和はドキリとした。

「以前、お母さんが、好きだった人と一緒に海に行ったことを、懐かしそうに話してくれたことがあったんです。この前、おじさんが海で私に話してくれたことで、ピンときたんです」

「・・・・・・・」
正和は、どう返事をしていいのかわからない。

「もし、良かったら、今度天神にある『月』というお好み焼き屋さんに、お母さんと一緒に食べに行ってくれませんか? これから、私は受験やダンスのレッスンなんかで、お母さんの相手が出来なくなるんで、よろしくお願いします」

栞は、一方的に言ってニコリと笑った。それは、いつものあどけない女の子の顔だった。
そして、再び礼をして足早に歩いて行った。

正和は、栞が自分に感謝の気持ちを伝えに来たのか。それとも、母親の真紀子のことを頼みに来たのか。よくわからず、呆気に取られたまま、栞の後ろ姿を見つめた。

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