君だけに夢をもう一度 ~完結編~
正和と小野寺は、居間のちゃぶ台の前に座りこんだ。
午前中は陽射しが差し込まない。サッシの窓を開けておくと、心地良い風が入って、蝉の鳴き声が響いてくる。

「昨夜はいろいろ迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」
小野寺は正座をしたまま、かしこまって頭を下げた。

「気にするな。足を崩せよ」
正和は笑みを浮かべる。

「では・・・・・・・」
小野寺は遠慮がちに言って、正和と同じようにあぐらをかいて座った。

小野寺は、昨日とは違いとげとげしいものはない。どこか穏やかな好青年のようにも見えた。

「これから、どうする気なんだ? 」
正和が小野寺の心を探るように聞いた。

小野寺は、しばらく考えこんだように黙りこんだ。そして、麦茶をひと口飲んで、
「今日、東京に帰ります」
心に決めたように、言葉を絞り出すように言った。



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