君だけに夢をもう一度 ~完結編~
午後。竹中、小田、浜田と倉庫で演奏を始める準備をしていた。
明日のライブのため、最終的な練習をすることになっていた。

「大変だったよ。タクシーから降ろした後、正ちゃんの家に寝かせつけるまで、ひと苦労だったよ」
竹中が、ギターのチュニングをしながら、昨夜の小野寺のことを大げさに話す。

「ところで、正ちゃんは、まだ来ないのか? 」
約束の時間を過ぎても現れない正和のことを、竹中が気に掛けたように聞く。

「さっき連絡があって、小野寺さんを送ってゆくから、少し遅れるって言っていたわよ」
小田が、譜面を見ながら答えた。

「正ちゃん、何考えてるだろうな。そこまで彼の面倒見るなんて・・・・・・・」
浜田が、右手でトラムステックを回しながら思ったことを言った。

「まったく迷惑なことだよ。世間知らずのお坊ちゃんには」
竹中が、小野寺のことを茶化すように言う。

「待たせて、ごめん」
扉が開いて、正和が急ぎ足で入ってきた。

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