君だけに夢をもう一度 ~完結編~
「小田さん、悪いけどキーボードを借りるわね」
「ええ、どうぞ」
小田が心良く自分のキーボードを貸す。

小田は、演奏には参加せずに椅子に腰掛けた。

「じゃ、始めよう」
正和は、皆に声をかけた後、敦子の顔を見る。
敦子も見つめ返す。
二人は、何か心で合図を交わしているように見える。

「皆、一回きりのライブと思って演奏しよう」
正和は真顔になっていた。いつもとは違い引き締まった表情になっていた。

その言葉に皆も真剣な雰囲気が包み込んだ。

バシッと、浜田がドラムステックを重ね叩きリズムをとった後、演奏が始まった。

タイトルは『君だけに夢をもう一度』
正和と敦子が、東京で再会した時、一緒に演奏しようと約束したサザンの歌だった。
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