君だけに夢をもう一度 ~完結編~
演奏が始まった。

バンドは、チームワークとコンビネーションが必要とされる。
飛びぬけて演奏上手な奏者がいても、歌唱力があるボーカリストがいても成り立つものではない。
バンドメンバーの皆が、自分を含めて相手のいいところを引き出してゆくことが大事である。
いわいる調和である。

その調和を保つのは、かなりの時間を要しての練習をしなければならない。
しかし、敦子は初めて正和のバンドに参加しても、その調和がとれている。

敦子の演奏は、他のメンバーの演奏意識を変えるものを感じる。

敦子は、久しぶりに正和と一緒に演奏をした。無意識だが昔のようにミュージシャンを夢見ていたころの、新鮮な気持ちが甦っていた。

正和も敦子と同じ気持ちだった。心から演奏して歌うことが、楽しくも有り心地良いことを思い出してくれた。

竹中も浜田も、敦子にひっぱられるように、しっかりとした音を出そうと気持ちが誘う。
それは無理やりそうさせるのではなく、自然にそういう気持ちが誘う。

小田は皆の演奏を聞いて、敦子が加わることによって音を出す感覚が違うことを知った。
そして、それが敦子のすごさだと思った。

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