君だけに夢をもう一度 ~完結編~
演奏が終わった。

「すごい!」
真っ先に竹中が、自分の演奏に感激したように言う。
そのことは、他のメンバーも同じだった。

それは今まで経験したことのない、不思議なものだった。
心地良い余韻が残っている。

「やったわね! 」
小田は、今までとは違うメンバーの演奏を聞いて、何か新しいものを発見出来たような感動があった。

「明日のライブは、敦子さんが参加することで、何かすごいことになりそうね!」
小田は、子供のようにはしゃいだ。

「うん、間違いなく、すごいものになる」
竹中は小田の言葉に同調したように言う。浜田も頷く。

「もうこれで十分だ。ありがとう。明日の演奏は自分達でするよ」
突然、正和が言った。

「・・・・・・・」
正和が発した言葉は意外だった。一瞬、水を打ったように静かになった。

「どうして?」
敦子が、けげんな顔をした。

「皆、悪いが彼女と話があるから、二人きりにさせてくれないか? 」
正和は、何か特別な思いがあるように真顔で言った。
< 129 / 137 >

この作品をシェア

pagetop