君だけに夢をもう一度 ~完結編~
正和と敦子が二人きりになった。他のメンバーは外へ出て行った。

「どうして明日のライブに参加させてくれないの ?」
敦子が戸惑った口調で聞く。

「ライブよりも、彼のことは、このままでいいのか ?」
正和が小野寺のことを気に掛けた。

「彼は・・・・・・関係ないでしょう」
敦子は、とぼけたように言う。

「無理するなよ。本当は彼のこと好きなんだろう。そうじゃなきゃ、彼のために酒を止めたりしないだろう」

「・・・・・・・」

「君が中田に話したこと聞いたよ。彼は、ニューヨークで音楽の修行で帰ってくるまで、酒を止めていたんだろう。でも、突然、彼が修行を止めて、君の前に現れたから、そのことが彼に対しても、自分に対しても悔しくて、つい今まで止めていた酒を口にして悪酔いしたんだろう。それだけ、相手のことを思っている証拠だよ」

「・・・・・・・」
正和の話は図星だった。敦子が何も言い返さなかった。

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