君だけに夢をもう一度 ~完結編~
敦子は、じっと正和を見つめたまま何かを考えるように黙った。

二人の間に何か張り詰めたものが包んだ。やがて、それを打ち壊すように、敦子はバッグを手にして扉の方へ行く。

扉を開けて敦子は、正和の方を見る。
「私、行くわ。ありがとう」と、言って、敦子は微笑して外へ出て行く。
その表情は、控え目だったが、どこか、素直に自分の気持ちを出しているように見えた。

敦子と入れ替わるように、小田が入ってきた。その後に続くように、竹中と浜田が入ってきた。

「ねえ、敦子さん、どこに行ったの? 」
小田は、足早に走ってゆく敦子の姿を見ていた。

「彼を追いかけて行ったよ。皆には申し訳ないが、明日のライブには参加せずに東京に帰るようだ」

「・・・・・・・」
正和の言葉に、メンバー全員がキョトンとする。

「さあ、練習しょう! 」
正和は、晴れやかな口調で言う。


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