君だけに夢をもう一度 ~完結編~
「ねえ、今度は正和が素直になる番ね」
「えっ! 」
敦子の意味しげな言葉が、携帯電話を切る手が止まる。

「ひょっとしたら、正和にも気になる人がいるんじゃないの? 」
「そんな人いないよ」
正和は否定的になる。

「そう・・・・・・でも、気がついたら、自分の心に思っている女性が、案外、自分の目の前にいたりするものよ」
敦子は笑顔で言う。

「正ちゃん、本番は始まるよ! 」
小田が慌てるように声を掛けてきた。

「すまん、そろそろ時間だ」
正和が電話を切ることを告げる。

「背中は押したからね」
敦子の弾む声がした。

「じゃ、またね」
敦子が別れを言う。

「ああ、元気でな」
正和が電話を切って、ステージへ向かった。


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