君だけに夢をもう一度 ~完結編~
九月になった。残暑は残っている。
正和は、得意先に向かって川端商店街を歩いている。アーケードの商店街は、冷房の風が吹き込んで涼しい。

右の角から真紀子が現れた。
「あら! 」
正和とバッタリ会って、びっくりする。

「よおっ! 」
正和が挨拶する。

「仕事なのか? 」
正和は、上下スーツ姿の真紀子を見て尋ねた。

「ええ、依頼人の御宅へ行って事務所へ帰るところよ」
真紀子は、正和と同じ方向へ向かって歩きながら答えた。

「ごめんね・・・・・・先月のライブ聞きに行けなくて」
真紀子は、正和のライブを急な用事で行けないことを詫びた。

「気にすることはないよ。仕事だから仕方ないよ」
正和は、真紀子に気を遣わして悪いと思った。

「栞ちゃんは、頑張っているかい?」
「ええ、勉強にダンスに頑張っているわ。きっと、敦子さんのアドバイスの影響だわ。あ、そうだ、敦子さん東京に帰る前、私の事務所に来たわよ」
真紀子は、突然思い出したように敦子のことを口にした。



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