君だけに夢をもう一度 ~完結編~
敦子は、『涙のキッス』、『チャコの海岸物語』、『ミス・ブランニュー・ディ』と、メドレーで演奏する。昔に戻ったような気持ちで演奏を楽しんでいた。

「どうして正ちゃんの元カノが、ここに来たんだ?」
竹中が、敦子に気を使い小田に近寄りながら小声で聞く。
小田からは、客人を連れて来るとしか聞いていなかった。
まさか、敦子が来るとは思いもよらなかった。

「それに正ちゃんは、どうしていないの? 」
竹中が首を傾げる。

「正ちゃんから頼まれたのよ。今朝電話があって、敦子さんを迎えに行ってくれないかって」
小田も小声で答えた。

「ねえ、ちょっと頼まれてくれない? 」
小田がニコリする。

「何だよ!? 」
小田の態度に、けげんな顔をする。

「私一度店に戻らなきゃならないから、その間だけ、敦子さんの相手をしていてくれない?」

「えっ!・・・・・いや・・・・・・それは、ちょっと・・・・・・」
竹中が困った表情をする。

「ほんの一時間だけ。敦子さんをここにいさせて欲しいだけなのよ。何か都合が悪いの?」
小田は、竹中のあたふたな態度が気になった。

突然、扉が開いた。



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