君だけに夢をもう一度 ~完結編~
竹中の妻の美和が入ってきた。

美和は、どっしりとした体格で愛嬌たっぷりの人のいい女性だった。
だが、今日はどこか無愛想である。

敦子が演奏を止める。

「はい」
美和は、盆に載せた三つの缶ジュースを竹中に押し付けるように渡した。

「あ、ありがとう」
竹中が他人行儀ぽく言う。


「美和さん、ありがとう」
小田が礼を言う。

「いつもうちの人がお世話になります。昨夜もいろいろありがとうございました。でも、たまには早く帰らせて下さいね」
美和は強い口調だった。

「えっ!? 」
小田は、美和の言っている意味がわからない。

竹中は、バツが悪い顔をする。

「じゃ、ごゆっくり」
美和は、竹中を睨んで厭味ぽく言って倉庫を出て行った。







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