君だけに夢をもう一度 ~完結編~
竹中と敦子は、正和から離れるように、L字型のカウンター席のかたわらに座った。そこは店の扉から近い席だった。

「生ビール二杯に、枝豆をお願い」
竹中が、カンンターから、おしぼりを差し出す静香に注文した後、トイレに行くため席をはずした。

正和は、厨房に近いカウンター席に座っている栞の横に座った。
栞は、敦子の顔を見ていた。

「おじさん、御免なさい。あの女の人と会う約束があったんでしょう?」
正和が席に座るなり、栞が囁くように言う。

「気にしないで・・・・・・」
正和は、ニコリと笑った。
その笑顔は、あきらかに自分に気を使っているものだったことは、栞にはわかっていた。だが、それよりも、彼女が店に入ってきた瞬間、正和のソワソワした態度が、栞は気になった。
正和にとって、彼女は特別な相手なんだろうか? ひょっとして恋人? いずれにしても自分のために、正和の大事な人と会う時間を無くしてしまったことに、悪い気がしたが、少し複雑な気持ちにもなった。







< 47 / 137 >

この作品をシェア

pagetop