君だけに夢をもう一度 ~完結編~
「何か飲んだら ? 」
正和も気に掛けて、栞に言う。

「お祖母ちゃん、ごめんなさい・・・・・・」
栞は、言葉を絞り出すように静香に言った。

栞にとって、静香はダンスの理解者である。黙って東京に行くことは、自分を慕う祖母に心配をかけることにもなる。今になって栞は、静香に対して裏切る行為をしたように悪い気がして仕方なかった。そのため、いつ謝ろうかとタイミングを待っていた。

「どうして、黙ってひとりで東京に行こうなんて、無茶なことしたの? 私は、あなたのダンスを応援しているのよ。自分の夢に向って一生懸命になることはわかるわよ。でも、あなたは、まだ未成年でしょう。真紀子は親としての責任があるのよ」

静香は、厳しい口調で言っている。だが、正和の印象は、どこか優しさみたいなものを感じる言い方だった。



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