君だけに夢をもう一度 ~完結編~
「私も中学生の頃、父親に将来はミュージシャンになりたいことを言うたら、あっけなく反対されたわ。でも、あきらめなかった」

敦子は、栞のことが、まるで昔の自分を見ているようで、つい励ましてあげたい気持ちが駆け立つた。

「それで、どうしたの?」
栞が身を乗り出して聞く。

「その頃の私は、特別にピアノが上手というわけでもなかった。誰よりも才能があるとも思わなかった。でも、ミュージシャンになりたい気持ちは、人一倍あったから、まずは自分の腕を磨くことを考えたの。でも、親に反対されているから、どうしたらピアノを習わしてもらえるかを考えたの」

敦子は、話の途中でお冷をグーツと飲んだ。

「それで、親に将来は音楽の教員になりたいと言って、ピアノを習わしてもらったの。それは、もちろん口実だけど。でも、それが私の夢を叶えるための、ひとつの手段だったの。とにかく、夢に向かって少しでも一歩進むように考えたの。だから、あなたも本気で夢を叶えたいなら、何か前に進むように考えて努力すべきよ」

敦子は熱く論ずるように言った。





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