君だけに夢をもう一度 ~完結編~
正和と栞が先に屋台を出た。

真紀子が屋台の外で立つている。

敦子が支払いを済ませて屋台を出てきた。

真紀子と栞が目を合う。
栞は体裁が悪いため、一瞬正和を見る。正和は目で『行くんだ』と言った。
栞は思い切ったように、真紀子の方へ近づく。
親子だが、どこかよそよそしい距離をとって向かい合う。

「お母さん、さっきはごめんなさい」
栞が頭を下げて素直の謝る。

真紀子は目を丸くして戸惑う。いつもけんかをした後、栞はとげとげしい態度をする。それで、つい厳しい口調になって説教してしまう。だが、今の栞には、そんな雰囲気がない。

「さっきは、叩いたりして悪かったわ」
真紀子は穏やかな口調で謝る。

「黙って東京に行こうとしたのは悪かったわ。でも、私、どうしてもダンスをやりたいの」
栞が、じっと真紀子を見つめながら思いを吐出すように言う。

真紀子は、ちょっと目を伏せて考えた後、
「そのことは、帰って相談しましょう」
真紀子は、理解を示すように答えた。





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