君だけに夢をもう一度 ~完結編~
真紀子は、正和と敦子の方へ近づく。

「栞がお世話になりました」
真紀子は、敦子に深く礼をする。

「栞がご馳走になったようで、代金をお支払いします」
「いえ、気になさらないで下さい」
敦子が遠慮がちに言う。

「中田、ここはいいから。栞ちゃんと帰って、いろいろ話あったら・・・・・・」
正和が会話の中に入る。

「そう・・・・・・じゃ、お言葉に甘えて、山本君もありがとう。私達帰ります」
再び、二人に礼をして栞の元へ行く。
すると、栞が二人の元へ駆け寄ってきた。

「いろいろありがとうございました」
栞は、二人に大人びた挨拶をした。

「ねえ、ちょっと・・・・・・」
敦子が栞に声を掛ける。

「さっき、私がアドバイスしたことは内緒よ」
敦子は栞に耳打ちする。

「ハイ」
栞は素直に返事をして笑みを浮かべる。その表情を見た敦子は、余計なことを言ってしまったと、少し後悔をする。


「栞ちゃんぐらいの年頃は、どこか夢見がちだよな・・・・・・俺もそうだった」
正和が、中田親子の後ろ姿を見送りながら言う。

「私もよ・・・・・・」
敦子も同調した。

思春期の頃は、いつもエネルギーを溜め込んでいて、親とは別の世界を持っている。
正和も敦子も、昔の自分のことを懐かしく思った。


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