君だけに夢をもう一度 ~完結編~
「彼女とは、以前とは恋人だった。でも、今はそんな感情は持っていない。昔、一緒に同じ夢を見ていた仲間と言うか・・・・・・同士っていう感じかな。たぶん、彼女の方も、それと似たようなものを、自分に感じているんじゃないかな。だから、また会うことができたと思っている」

「・・・・・・・」

「実際、東京で彼女と再会していなかったら、また音楽をやろうなんて思いもしなかった。今はすごくバンドをすることが楽しいよ。大げさな言い方かもしれないけど、生きていることの楽しみを感じているよ。そんな、きっかけを作ってくれた、彼女には感謝している。だから、彼女が自分達と一緒に演奏したいと言うなら、感謝の気持ちを込めて一緒に演奏したいと思っている」

正和は、正面を向いたまま真顔で答えた。

小田は、正和の横顔を見つめいた。そして、正和の言葉は本心だと感じた。

信号が青になった。
車は、ゆっくり動き始めた。



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