君だけに夢をもう一度 ~完結編~
敦子は、昨夜寝入った店を出た。店は中州の川沿いにあった。
午後の暑い陽射しがまぶしく感じる中、記憶をたどるように川沿いの歩道を歩いた。

車道のある橋に来た。橋の上から自分が歩いて来た方向を見る。昨夜、小野寺と入ったレストランから逃げるようにして、ここに来た。
その時、ムシャクシャした気持ちで、きらびやかなネオンの灯りを見ていると、急にアルコールを口にしたい気持ちが誘った。なぜか気持ちをスッキリさせたい。そう思うと、ネオン街に足を運ばせていた。

今いる所から、敦子の宿泊しているホテルは近いことがわかった。だが、ホテルへ戻るのには、ためらいがある。

もしかして、小野寺がホテルでまちぶせしているかもしれない。今は、小野寺の気持ちを受け入れてはいけない。受け入れてしまうと、小野寺自身が駄目になる。

敦子は、自分に言い聞かせながら歩き始めた。
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