君だけに夢をもう一度 ~完結編~
ハッとして、敦子は意外そうに真紀子の顔を見た。

「やはりそうだ・・・・・」
真紀子は後ろ姿が見て、敦子だろうと思って声を掛けてみた。正解だったので、嬉しそうに笑顔で言ったが、敦子の姿を見るなり少し様子が変だと思った。
昨夜と同じ服装で、顔もメイクをあまりしていない。昨夜のキラリと輝いた敦子とは、まったく雰囲気が違う人間に見えた。

「どちらか行かれるですか? もし良かったら乗っていきません?」
真紀子は、仕事で外に出ていて事務所に帰る途中だった。

「・・・・・・」
敦子は、しばらく考えたが、このままここにいても仕方ない。真紀子に頼んでみようと思った。

「じゃ、お言葉に甘えて」と、言って車の助手席に敦子は乗り込んだ。

「どちらまで行かれるですか? 」
真紀子が尋ねる。

「突然、こんなことを頼むのはご迷惑かもしれませんが、どうしてもお願いしたいことがあるんです」
敦子は、言葉を絞り出すように言った。


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