歳の差レンアイ、似た者同士。
「触らないで!!」

悲鳴に近いその声の主は、

荻原紗英だった。

救急外来のスタッフは唖然。

たぶん救急車で来たのだろうけど、彼女は今ベッドの上に立っていた。

「荻原さん、とにかく落ち着こう?もしかしたら違う病気の可能性もあるから、心電図とらせてくれる?」

まるで猛獣をあやすかのように、そろりそろりと歩み寄る救急医の先生。

ところが、荻原紗英はベッドから飛び降りようとする。

危ねぇな…。

「先生、ちょっと時間置きませんか?患者さんビックリしてますし…」

近づかせてくれないのなら診察も無理だろ。

患者本人は置いといて、救急隊の記録を手に取った。


 7:50
 通学中の電車内で胸痛あり
 近くにいた乗客が通報する。


「もう胸痛くない?」

返答はなかった。

でも立ってんだから、それほど痛くもないんだろう。

「何もしないからさ。とりあえず座ったら?落ちたら危ないし?」

元気そうな姿を見て、逆に安心というか…。

ただ気になるのは、その怯えきった表情だ。

何かに怯えてんのか?

こいつら何かした?

オレには、猛獣というよりもウサギみたいに見えてくる。

「オレ責任もって診ますんで」

スタッフはしぶしぶ掃けて行く。

それを確認して、荻原紗英はへなへなとしゃがみこんだ。

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