歳の差レンアイ、似た者同士。

彼女の行方

***

≪不眠が続いているようなので、次回診察時には眠剤の処方をお願いします。≫


そんなメモをカルテに入れておいた。


それから1週間後。

「あ、伊崎先生」

外来担当のベテラン先生から声をかけられた。

「メモ書いてあった患者さん、診察来なかったよー。予約表ちゃんと出した?」

「…へ?出しましたよ!」

「だよねぇ。一応その日電話してみたんだけど、出なくて。忘れてたのかな…」

気まぐれっぽい奴だから、そんなこともあるかもしれない。

だけど、気になる。

不安にかられる。

思いつめて…まさか…!?

居ても立ってもいられず、椅子から立ち上がっていた。

__ドサーッ

「おい伊崎っ!仕事押しつけんなよ!?」

先輩に頼まれた、学会発表用の原稿作り。

和英辞書ごと道重のデスクの上に移動ー。

道重もまた発表用スライドを作成中なのだけど。

聞こえなかったフリ。


荻原紗英の連絡先をカルテから調べる。

自宅の電話番号は…と。

電話をかけてみる。

『…もしもし?』

つながった!

けど、たぶん母親?

「夜分恐れ入ります、城東医大病院の心臓外科の伊崎と申します。紗英さんいらっしゃいますでしょうか?」

『紗英ならまだ帰ってませんけど。何か?』

「いえ、先日診察日にいらっしゃらなかったようなので、体調のほうは大丈夫かなと思いまして」

『うちの紗英、どこか悪いんですか?』

「…娘さんから聞かれてませんか??」

『えぇ、何も。あまり自分のこと話さない子なので…』


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