歳の差レンアイ、似た者同士。
あくびをかみ殺しながら、教授回診の最後尾について行く。

最前列の会話なんて全く聞こえねー。

患者も見えねー。

でも、とりあえず病棟を1周。

「ありがとうございました!」

で、解散。

のはずがいきなり呼ばれる。

「道重先生、伊崎先生」

「…はい!?」

あわてて人の波をぬって前方へ。

「症例数は取れてるか?専門医になるなら、積極的にオペの経験を積みなさい。論文もどんどん出して、医学の発展に貢献するように」

「はいっ」

まるで殿様からお言葉を頂戴する気分。

ははーっ!!

ってか?

専門医、ね。

あと何年かかるだろう。

それまではココにいるつもりだけど。

親にもそういう口実を使ったりして、実家に戻るのを拒んでるし。

「伊崎先生、お父さんはお元気かな?」

ドッキー…!!

あまりかかわりのない先生たちはポカンとしてるけど。

「彼も優秀な心臓外科医だった。その血をひいているはずだから…」

一気に汗が出る。

具合が悪くなる。

誰にでも、1つや2つは人に触れられたくないことがある。

まさにソレだ。

冷や汗をかきながら頭に一瞬浮かんだのは、荻原紗英の顔だった。
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