歳の差レンアイ、似た者同士。
しかも同業者が多いのが痛い。

「秀介くんはまだ大学病院に残ってるんですって?どこの大学?専門は?」

根掘り葉掘り聞くんじゃねーよ!

「うちの子は慶応の医学部で…」

って結局自慢かよ!?

オレも大人だし、そんなことで意地張っても仕方ないから流しておく。

これで一件落着。

と思ったら、横からお袋が口を出す。

「秀介は心臓外科がやりたくて城東医大に進みましたの。学校からも慶応を勧められてたのに、心臓外科は城東医大が国内最高峰だからって…ホント欲のない子でしょ~?」

余計なことを言うなよ!!

プライド高い奴らの集まりって、なんでこう厄介なんだ。

こういうのを見て育ったから、コッソリと下働きでいいやって思ったのかも。

色んな複雑な人間模様を見て、長い長い1日が終わる。



「秀介、今日泊まって帰るんでしょ?」

「いや。患者が心配だから帰るよ」

「え~っ?」

お袋はいつもの調子だけど、親父はなんか…静か。

親父ってこんなにちっちゃかったっけ?

娘が嫁ぐってのは寂しいものなのか。

久しぶりの実家の匂い。

この家を出て、もう丸8年になるのか。

昔は出たくて仕方なかった。

でも、いざ出てみると、やっぱりココは落ち着く。

「じゃあね、帰るよ」

そう言って玄関を出ようとした、その時。

「秀介」

反射的に身構える。

親父の声。

やっぱ苦手…。

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