歳の差レンアイ、似た者同士。
「また走ってきた…」

ギリギリで間に合った、彼女との約束の時間。

呆れたように言われた。

「悪かったなっ!」

「休みないんだね、先生」

「残念ながらなっ」

息を整えながら、今日の作戦会議。

「先生は、何の設定にしよう?やっぱ浪人生かな?」

「浪人生って言うな!」

「だってぇ~」

暴力受けてた元彼に会うというのに、笑ってる彼女に安心する。

「じゃあ、お医者さんね」

「それはマズイ」

「どうして?」

「ヒポクラテスに呪われるから」

「ヒポクラテスって?」

「知らなくていい」

「そう?」

ただの設定の話だけど、なんとなく罪悪感があって。

医者と患者の壁は高い…。

結局、無難に会社員の設定で。

伊崎秀介、26歳。

某メーカー勤務のサラリーマン。

憧れの職業だ。

「先生、お芝居大丈夫なの?」

「大丈夫だろう…と思う。口先だけの男だから、つじつま合わせは得意だ」

「なにそれー?」

歴代の彼女には非難されてきた、数々のでたらめな言い訳たち。

役に立つ日が来るなんて、皮肉だな。
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