歳の差レンアイ、似た者同士。
そんないつもの口喧嘩をしていると、ケータイが鳴った。

彼女の様子をチラリとうかがいながら電話に出る。

「…もしもしー?」

『伊崎先生!?今ERに心タンポナーデの患者さんが来てて、当直の先生は今病棟の急変に当たってて手が離せないそうなんですけど…先生今病院の近くにいます?』

呼び出しだ…。

ってか、なんでオレ?

「他に先生いないんですか?心臓外科じゃなくてもよくない?」

『みんな急変のほうに行ってしまって…今ERには研修医の先生しかいなくて』

「そうですか…」

電話の向こうでは、研修医の悲鳴っぽい声が聞こえてくる。

“血圧がぁぁ!!”って。

たぶん、この前ウチにも研修来てた内科志望の奴。

…落ち着け。

キミだって一応医師免許もってるんでしょーが。

どうにかしろよ。

オレの向かいに座る彼女はつまんなさそうな顔。

……けど、

ゴメン。

行かなきゃ。

「とりあえず…心嚢穿刺します!一応、オペ室は心タンポ解除術の準備をしておいてください。研修医には、家族に説明させておいて!5分でそっちに行くから!」

電話切って立ちあがる。

「行くの?」

…うぅっ…。

ホント、最低だよ。

「ごめん…」

「別にいいけど…」

「今度…行く場所考えておいて!ぶらぶらするんだろ?」

パッと表情が変わる。

「…うん!」

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