歳の差レンアイ、似た者同士。
着いたのは伊崎総合病院じゃない。

妹の嫁ぎ先が経営している脳神経専門病院、茅島病院だった。

田島さんは慣れた様子で夜間入口から入って行く。

俺は完全にアウェーで落ち着かず…

田島さんについて行くだけ。

暗い廊下の先に“特別室”と書かれた立派なドア。

田島さんがノックしたあと、ドアをあけると眩しいくらいの明かり。

初めに目に入ったのは妹夫婦だった。


「お兄ちゃん!?」

「お袋が電話してきたから」


広い部屋の奥にはベッドがひとつ。

手前には応接セットなんてあったり。

そのソファーでお袋はうたた寝。

親父はというと、検査着を着てはいるもののベッドに座って書類の山に囲まれている。


「伊崎院長、今日くらいはお休みください。必要なときは私が代行しますから…」

「ああ、わかってる。でも、これだけは目を通したいんだ」


田島さんはテーブルの上の書類を素早く拾い集めて、書類ケースに片付けた。

世話の焼ける上司で大変だな…。


「秀介さんもいらっしゃいましたし、久々にゆっくりお話でも」


田島さんの言葉に、親父は何度か頷いてみせただけで無言だった。

まぁ、そんな感じだよな。

いつものこと。

一瞬でも心配した俺がバカだった。


「どうせそんなことだろうと思ったよ」

「…お兄ちゃん!そんな言い方っ」


妹にとがめられるけど、これもいつものことなんだ。

さぁ、さっさと帰ろう。

俺には自分の患者が待ってる。

親父に背を向けようとした、その時。


「秀介」


親父の声。
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