歳の差レンアイ、似た者同士。
朝起きると、サエは俺の腕の中にいた。

ゆっくりとした呼吸。

静かな鼓動。

サラサラの黒髪。

手をつなぐこともできなかった数ヶ月前、あれから少しずつ近づいて、やっと腕の中にやってきた。

けれど虚しさが胸に広がる。

サエは、だれか包み込んでくれる優しい人が欲しいだけなんだ。

自分の居場所が欲しいだけ。

そんなサエを責めることはできない。

ふう、とため息をつくと同時に、ケータイが無機質な電子音を立てて鳴る。


「もしもーし…」


電話の相手は病院の看護師。

担当患者の急変の報告。


「…わかりました、今から向かいます」


こんな俺じゃ、そんなサエの居場所にもなれないよ。

さびしい思いをさせるだけだ。
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