戦えよウルトラ・マンタロウ
怪獣裁判長。10

裁判員制度が実施された。裁判官1人、裁判員3人とマンタロウがいる。今、裁判長が判決を読み上げるところだ。

怪獣ビルコワシが、被告人席で立っている。ビルを破壊した罪で、裁判を受けているようだ。

5級建築士が作成した偽造書類によって、違法に建築されたビルがある。その後、解体されてしまった。その怨念が詰まって誕生した、怪獣だ。

裁判長「主文、被告人を懲役3年とする。判決理由、糾問的捜査観は…、現住建造物破損につき…、不法行為にもとづく損害賠償請求権が…、未必の故意とみなし…、観念的競合をもって…、

原因において自由な行為とは、許された危険の法理によって…、可罰的違法性につき…、客観的に外形的な標準を備え…、目的効果説からして…、禁反言の法理は…、憲法保障説との因果関係で…、

危険分配の法理を…、法益権衡の原則から導かれる…、主観的予備的併合に従い…、私はアルファでありオメガであって…、特別の犠牲により…、統治行為につき司法審査が及ばず…、

部分社会の法理が適用されず…、得べかりし利益が…、ファン・デル・ワールスカの力(ちから)が引き出す…、フラグメントアナライザーを用いて…」

マンタロウが、申し訳なさそうに手を挙げた。

マンタロウ「済みません、裁判長ー。あのー、何を言っているのか、全然、分からないんですけどー…」

弁護士、検察官、傍聴人、裁判員、書記官、廷吏、取材記者たちみんなが、ポカーンと、口を開けている。意味不明で、判決理由を理解できていない。
マンタロウ「もっと、分かりやすく、素人でも理解できる判決理由に、書き直して下さい」

裁判長「(嘆く)1人で、100件以上も裁判を受け持っているのだぞー。1カ月以上もかけて、この理由を書き上げたんだぞー。少しは、理解してくれよー」。オヨヨ。

裁判長は、嘆いている。あー、ストレスたまるー。買春行為に走りそう。痴漢行為に走りそう。盗撮したーい。誰か、俺の愚痴を聞いてくれよー。

将来、ここの被告人席には、この裁判長が着席しそうだ。

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