愛してるよと言われたくて

ある日学校から帰ると、

父の靴が玄関にあった。


その時父は東京に単身赴任をしていた。


私は父が帰ってきたのだと心を踊らせリビングに入った。


しかし父の姿はなかった。


母が食卓に座って私を見つめる。


「つかさ、座りなさい」



私はただならぬ空気を感じた。



椅子に座る。




テーブルにあるお菓子を物色しながら、

「用件はなに?」

そう尋ねた。







「お父さんガンなんだって。」







「そう。」







私の心臓は今まで感じたことがないくらい早く脈を打った。
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