愛してるよと言われたくて
翌朝、私はいつもどおり起き、何も言わずにリビングへ入った。
母の横を無言で通り過ぎ、冷蔵庫を開ける。
また、何も無い。
マーガリンだけを取り、私は食卓へ移動した。
また、母の横を通り過ぎると、
母の動きはまるでDVDのリモコンを押したように、
一時停止した。
来た。
私は覚悟を決めた。
一瞬の出来事だった。
母は何も言わず私の髪の毛を掴み、
上下左右に強く振った。
「やめて。痛い。痛い。」
「お母さん、辞めて。」
私はその場にへばり付くようにしゃがんだ。
それでも母はその手を離さず一心不乱に私の髪を引っ張り続けた。
神様お願い、早くこの時が過ぎ去りますように。
そう願った。
「あんたはうちの子じゃない」
そう言いながら母は私の体を揺さぶり、
台所に寝そべる私の頭を強く床に押し付けた。
床はひんやりと冷たい。