わたしはね、ママを選んで産まれて来たの。 −上−
翌日。
折り畳みベッドで眠ったママは、
体中が痛いって言ってたのを覚えててる。
今考えたら、
あんなハンモックみたいな、
不安定な折り畳みベッドじゃ
安眠出来なかっただろうなって、
凄く申し訳なくなる。
朝8時。
それがこの病院の朝食の時間。
初めて病気での朝ごはん。
つまり初めての病院食。
3歳のころの記憶はやっぱり曖昧で、
もうどんなご飯だったかも、
覚えてないけど、
病院食はあんまり好きじゃなかった。
だけど、
幼稚園生だったわたには、
10時のおやつがあったのが、
凄く嬉しかった記憶がある。
みなみに15時にもあった。
朝食が終わって、
父がわたしの荷物を持って来てくれた。
タオルとか、パジャマとか、歯ブラシとか、コップとか、起き時計とか、絵本とかいろいろ。
その間にママは、
入院手続きとかしてくれてたみたい。
朝は、
看護師さんが体温測定に来たり、
吸入の時間には吸入しなきゃいけないし、
点滴なくなったら、
ナースコールで呼んで取り替えてもらったり
回診の時間になった。
なんかドキドキしながら先生を待ってた。
回診に来た先生は、
わたしのかかりつけの先生で、
「入院しちゃったか、しんどかったね」
って言ってくれたのを覚えてる。
先生の名前は「鈴木先生」
この先10年以上お世話になるなんて、
この時は、わたしも両親も、
誰も思っていなかっただろう。
入院期間は長くて一週間だと言われた。
ぜぇーぜぇー。
ひゅーひゅー。
それがなくなれば退院出来るとのことだった。
(はやく、ようちえんいきたいなあ)
この時は毎日そう思っていた。