わたしはね、ママを選んで産まれて来たの。 −上−
きっかけは、
学校の掃除中だった。
わたしの班と、
もうひとつの班は、
一階の自分の教室の掃除担当だった。
前日、雨が降ったせいで外は、
ぬかるんだ場所があったり、
水溜まりが何カ所かあった。
同じ班だった関田くんは、
元々やんちゃで、
掃除をサボるなんてしょっちゅうだった。
この日も
ベランダから、
デッキブラシを持って、
上履きのまま外に出て、
中庭掃除の班の女子を
追いかけて遊んでいた。
わたしはたまたま黒板消しの
チョークの粉を落とすため、
ベランダに出ていて、
その様子をぼーっと眺めていた。
(…つ、つめたいっ!!)
一瞬何が起きたのか、
全く理解出来ないでいると、
デッキブラシを
泥水の水溜まりに浸して、
わたしにその水を掛けてくる関田くんが居た。
さっきまで追いかけ回していた女子は、
見知らぬ素振りで、
掃除用具を片付け始めるが、
関田くんは、
相変わらずわたしにデッキブラシで、
泥水を掛けてくる。
最初のうちは、
「きゃー!やだー!」
なんて逃げ回ってみたけれど、
何故だか嫌な予感を察知したわたしは、
慌てて教室に逃げ込んだ。
仲の良かった関田なのに。
急に、どうして?
いきなりのことで、
突然過ぎてパニックなったが、
たまたま、ただのちょっとした
悪気のない悪戯だったんだと
わたしはそう思い込みたかった。