わたしはね、ママを選んで産まれて来たの。 −上−


石川先生に
絶対バレないようにしなくちゃいけない。



だから慌てて急いで、
2班分のやることをこなす覚悟をした。


全員分の椅子を机の上に上げて、
その全員分の机を教室の前に寄せる。
それからほうきでゴミを集めて、
ちり取りで取って、
雑巾掛けをする。



なんとかやっと
前半が終わったところで、
異変に気付いた
廊下掃除のみんなが声を掛けてくれた。


「みんな掃除の時間忘れちゃってるみたいで」


なんて、
バレバレの嘘をついたけど、


「廊下はもう終わったから、うちの班で手伝うよ!」


そんな言葉を聞いたときには、
目頭が熱くなるのを、
必死に堪えて


「ごめんね、ありがとう」


か細い声でそう言うのが、
正直やっとだった。




廊下担当の班のメンバーのお陰で、
掃除終了時間ギリギリで、
なんとか終えることが出来た。

全員分の机を並べている頃には、
他の場所の掃除を終えたクラスメイトが、
わらわらとクラスに戻ってきてしまって、
手伝ってくれた班のメンバーに、
きちんとお礼が言えなかったけど、
廊下の水道で雑巾を洗っているとき、
隣にいた手伝ってくれた班の清ちゃんに


「本当にありがとうね」


と、小さく呟くと、


「気にしなくて大丈夫だよ」

と、笑顔で優しい言葉を掛けてくれた。
わたしはまた泣きそうになったけど、
負けないように笑い返した。





わたし、決めたんだ。
何ががあっても、泣かないって。



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