わたしはね、ママを選んで産まれて来たの。 −上−
「小児喘息ですね」
先生のたった一言。
それを聞いた両親は、
やっぱり、と思ったらしい。
「吸入して様子見てみましょう」
先生がそう言うと、
看護師さんは見たこともない機械を弄り始めた。
「ここを、お口にくわえて、吸ったり吐いたり出来るかな?」
そう言われて、
看護師さんから手渡された未知なる物体。
プラスチックで出来ていて、
中に液体が入っているそれを、
言われた通り口にくわえる。
「じゃあ行きますよー?タイマーがピピーって鳴るまでスー、ハーってしててね?」
意味が良くわからないまま頷くと、
急にボコボコボコボコと機械が音を立てた。
口にくわえた未知なる物体の中身の液体も、
ボコボコ大きなあぶくを立てはじめた。
びっくりして隣に居るママを見ると、
「大丈夫だよ」って頭を撫でてくれた。
でも不安になって、
ちょっと口を離してみると、
くわえる部分から白い煙が出ていた。
「この白い煙はね、苦しくの直してくれるお薬だからスーッて吸い込んでね?」
不安そうなわたしに気付いた看護師さんがそう教えてくれてから、
タイマーの音が鳴るまでの5分間、
生まれて初めての吸入体験だった。
「お疲れ様、よく出来ましたー。」