わたしはね、ママを選んで産まれて来たの。 −上−
「じゃあもう一回、先生にお胸の音聞いてもらおうね」
看護師さんに言われて頷くと、
またパジャマを捲り上げられる。
先生が聴診器をわたしの胸に当てる。
「はい、大きく吸ってー!吐いてー!」
今度は背中に聴診器を当てられる。
「はい、もう一度吸ってー!吐いてー!」
わたしにはまだ、
ひゅーひゅー。
ぜぇーぜぇー。
変な音が聞こえる。
「んー、まだ苦しそうだね。点滴しよう」
……点滴?
痛いの?注射?
不安になってママを見ると、
手をぎゅっと握ってくれた。
大丈夫、隣にいるから平気だよって、
何度も言ってくれた。
先生が看護師さんに指示を出すと、
点滴スタンドに点滴が用意された。
「大丈夫かな?」
看護師さんに聞かれて頷くと、
左手を取られ血管が見える部分を、
消毒ガーゼで拭かれる。
「ちょっとだけチクッてするけど、ごめんね」
ママの手をぎゅっと握って、
針が刺される痛みになんとか耐えた。
わたしは元々、注射で泣かなかったのだ。
手の甲に刺された針に、
点滴のチューブが繋がる。
看護師さんは、腕時計を見ながら、
点滴の落ちる速度を調節した。
「ちょっと時間かかるから横になったり楽な姿勢でいてね」
ありがとうございます、とママが言ってから、
看護師さんはわたしたちのいるベッドのカーテンを閉めて先生の元に戻って行った。
「みーちゃん病気なの?」
「うん、パパと同じ病気だって」
「そっか」
「でもみーちゃんは子供のうちに治るから大丈夫だよ」
「ほんと?」
「うん」
ママの手の温もりと、言葉が、
凄く温かかったのをよく覚えてる。