天神学園高等部の奇怪な面々Ⅱ
(どいつだ?どいつが強い…?)

新入生の列の中を、背の高い男子生徒が歩く。

視線はあくまで鋭い。

優等生の目付きではない。

かといっていわゆる不良の目付きとも違う。

例えるなら『獣』。

獲物を探して密林を彷徨う肉食獣の眼だ。

…その例えに遜色のない体格を、彼は持っていた。

ゴロリとした黒ずんだ拳、生傷だらけの体躯は僅かの無駄もなく鍛え上げられている。

アスリートのそれではなく、戦闘…しかも徒手空拳での格闘に特化した肉体だ。

丹下 龍太郎(たんげ りゅうたろう)は空手家である。

中学時代は空手で相当鳴らしたらしく、大会でも喧嘩でも負けなし。

数々の武勇伝も持っている。

真冬に数十キロ先の湖まで走っていって水面に張った氷を拳で叩き割って行水した、歓楽街で50対1で喧嘩して勝ったなどというのは序の口。

極めつけは喉に出来た悪性の腫瘍を焼いた針金で自ら毟り取って日本酒でうがい消毒して完治させたというのだ。

医者にかかればよいものを、敢えてそんな荒療治で治す辺りに、彼の荒くれ者としての美学が窺えた。

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