天神学園高等部の奇怪な面々Ⅱ
「『驚かせてしまいましたか』じゃねぇよっ!」

龍太郎がまくし立てる。

「あんた絶対わざと驚かしてるでしょ!」

天眞も膨れっ面になる。

「わらわにさえ気配を読ませぬとは…穹、お主どういう隠密術の使い手じゃ?」

迦楼羅も口を尖らせる。

「隠密術とは心外ですねえ。まるで僕がコソコソしているみたいじゃないですか」

そんな事を言いつつも、穹はまるで気分を害したような気配はない。

むしろ噛み付いてくる三人の様子を楽しんでいる節さえあった。

…文野 穹。

彼ほどこの天神学園で素性の知れない人物もいない。

迦楼羅や天眞のような特別な能力の持ち主ではない。

ラエクスのようなロボットでも、遥のような他者の上に立つ資質の持ち主でもない。

龍太郎のように武道による肉体の鍛錬をしている訳でもない。

恐らくはただの人間。

にもかかわらず、彼はこの学園で独自のポジションを築き上げつつある。

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