おもいのたけ~ホワイトデー物語~
た→立ち向かう

凉花Side


「どうぞ、幸せなホワイトデーを…」

笑顔を忘れず、お客様に告げる

閉店間近で商品の整理をしていると、カウンターに影ができる

「いらっしゃいませ」

そう言って、頭を下げた

「すみません。ホワイトデーの贈り物…」

聞いたことのある声に顔をあげる

客もビックリしたのか絶句している

「ホワイトデーの贈り物ですね。どのようなものがよろしいですか?」

私は普段通りに笑顔で話しかける

「あぁ、店員さんのお勧めは?」

「一番の売れ筋は、甘さ控えめのこちらのチョコです。女の子は…」

1番売れてる商品を教えた

「店員さんのお勧めは?」

私は躊躇いがちに答えた

「私はバームクーヘンをお勧めします。私が好きなだけですけど…」

嬉しそうに微笑む客と話続ける

「じゃぁ、バームクーヘンをプレゼント包装で」

「かしこまりました。どんな方に贈られるんですか?」

「寂しがりだけど強がる女」

照れ臭そうに言う客に私の心は痛む

「とても可愛い方なんですね」

すると、客は笑顔で

「彼女じゃないんですけど、大切な人なんです」

私の表情はひきつっていたかもしれない

包装し終り、笑顔を作り、袋を渡しながら

すると、客はその袋を私に突き出し…

「凉花の為に買ったんだ。仕事が終わったら連絡よこせ!」

唖然とした私は呟くしかなかった

「ズルいよ…」

< 15 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop