おもいのたけ~ホワイトデー物語~
「卓くん、コーヒーで良い?」
ちょうど母が卓に飲み物を聞いている
「ありがとうございます。でも、気にしないでください」
「わかったわ。じゃ、ごゆっくり」
そう言いながら、母はリビングに向かう
私とすれ違う時、小声で囁く
「頑張るのよ」
明らかに茶化した様子
鼻歌交じりに去って行く
私は何も言えず、母が歩いて行った方向を睨み付ける
「凉花、風邪ひいてるのに悪いなぁ」
その声に気が付き、振り返る
卓がいること忘れてた
「全然…」
無意識に昨日掴まれてた、もう痛くもない左手首を抑える
顔も合わせ辛くて俯いてしまう
「昨日はごめん」
いつにない弱々しい口調で話す卓
私は驚いて顔を上げた
それを見た卓は、なにか落ち込んだ表情をしたまま、言葉を続ける
「ちゃんと話を聞いて欲しい」
私はきちんと聞くつもりだったから…
「わかった」
そう言うと卓の表情は急に知らない男性のようになり、話始める
「いつも確かに逃げてたんだ。自分の気持ちから…。でも、はっきり言える。俺はすずが好きだ。結婚を前提に…」
『結婚を前提に…』って…