長い一日。
「ほら、友美。あなたの好きな香り。チューリップ」

「いい香り。」

友美は幸せそうに笑った。

「私帰りますね」

シイナは立ち上がった。

さっき友美の体から出てきた私もつられるように立ち上がった。

「まぁ、ごめんなさい。せっかく来てくれたのに…」

「空菜ちゃん!ありがとう」

友美はとびきりの笑顔でいった。

そして、小さな声で付け足した。

「シイナさんも…」

少し驚いた顔をしたかと思うとシイナは、微笑んで手を振った。

「シイナさんって誰?」

扉が閉まるとき友美のお母さんがそういったのが聞こえた。

「空菜やるじゃん!」

シイナが私の背中をバシッと叩いた。

「ん?どうした空菜?
浮かない顔して」

「…。友美は自分の産まれたときの香りを知ってるんだね」

私が友美から出る瞬間ほんの少しだけチューリップの香りがした。

シイナは少し黙ってからこういった。

「友美ね。ガンなんだって。
でも、ヘレン・ケラーだったせいで意志表現できなくて見つかるのが遅れて、助かる可能性低いんだって」

「そんなっ!?」

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