長い一日。
「おまえさん、何を言いたいのかね?」

「心の扉、開いてみてよ。
おじいさん言いたいことまだちゃんと言ってないじゃん」

シイナは、私の手をつかんでまた相手の手に触れさせる。

でも今回はなかなか溶け込めない。
痛い。

やっと中に入り込むと、そこには大きな鋼鉄の重そうな扉に頑丈そうな鍵が何十個もかかっている。

「なにこれ…。まだ『部屋』の中に入れてないじゃん。
てかこれじゃ入れないし…」

私は鍵に触れてみた。

鉄の冷たさにまじって何かが私に伝わってくる。

悲しみ…?

他の鍵にも触れてみた。

寂しい、苦しい、心細い、伝わってくるのは悲しい感情ばかり。

そして、どの鍵も氷みたいに冷たい。

鉄製だからとかそう言うんじゃない。

心の奥底から冷えてしまうような、痛くて、苦しくて、寂しくて泣きたくなる感じ。

『一人ぼっち』そうそんな感じ。

でもこれは周りのせいじゃない。

おじいさんが作った環境。

『どうせいなくなるんだから、誰も寄ってくるな』

そんな悲しい考え方しないでよ。

『おまえさんだってそうだろ?』

私も?

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