長い一日。
「その曲聞かせてよ」

私は好奇心でそういった。

しかし、おじいさんの心は首を横に振った。

「だめだ。この曲はあの人のものだ。他の人に聞かせることは…」

私は近くのピアノに目を向けた。

「ふーん?」

なんとなく近くにあったピアノに触れてみる。

“ポォーン”優しい音がする。

しっかりと音程のあったピアノの音。

私はピアノを弾きはじめた。

別にピアノを習ってたわけじゃないから、デタラメなメロディがピアノから流れる。

優しい優しいピアノの音が『部屋』の中に響き渡る。

「ねぇ、このピアノの音をあわせたのはあなた?」

おじいさんの心は、まるで醜い物を見るかのような目でピアノを見た。

「そうだよ」

「優しい音を出すピアノだね」

私はそんな目も気にせずにさらりと言い放った。

大切な何かを思うような、そんな優しい音。

醜さの欠けらもないから。

「ねぇ、何か曲を弾いてよ」

「どんな?」

おじいさんの心は、暗い表情を私に向けた。

「どんな?…うーん。
そうだ!私の曲を作ってよ!」

私はかかとで一回転して言った。

「君の?」

「そう!」

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