長い一日。
「…不安?」

シイナはボソッと言った。

不安はない。少し疑問に思っただけ

そう言おうと口を開くとシイナは話を聞かずに私をひっぱった。

「次…行こう。次!」

無理矢理笑うシイナ。

シイナ?なにか変だよ?

「…シイナ」

「ごめん空菜」

私より先を歩くシイナの顔は見えない。

でもどこか悲しそうだった。

「いきなりどうしたの?」

「なんでもないよ」

シイナは何事もなかったかのように笑って振り返った。

でも確かに言っていた。

『ごめん』と…

シイナ。あなたは何者?

また聞きたくなったけど、今聞いたらシイナはいなくなってしまいそうな気がした。

なんでそんな気がしたのかはわからない。

でも、怖かったんだ。

シイナがいなくなってしまうのが、この暖かい手が離れてしまうのが

…怖かったんだ。

変だよね。

体は私なのに、中身が違うだけで何もかもが違って見えるの

シイナは、私にはできないような可愛い顔で笑えるし、こんなにも優しい心を持っている。

私にもこんな風にすることができたかな?

ねぇ、シイナ。

不安になってきたよ。

シイナ、あなたは何者なの?

私の死の直前にあらわれて、私の体も魂も振り回す。

でも、不思議と嫌じゃないの。

むしろ、感謝したいくらいの結末をくれた。

シイナ。

あなたに付けた名前の由来はなんだっけ?

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