長い一日。

「シイナ。名前の由来思い出したよ。」

「なに?」

シイナは振り向きもせず、ただ返事だけをした。

「『人の思いを生かせる子になるように』思うに生きるって書くの」

思生。あなたにピッタリな名前だね。

あなたは自分の気持ちに素直にさせてくれる力を持っている。

「いい名前だね」

思生が笑う。

「思生にピッタリな名前だね」

「そうかな?
私は自分の気持ちに素直になれてない」

思生?

「空菜。私はあなたがうらやましいよ。あなたはやろうと思えばなんだってできる」

思生は哀しげな瞳をうつむけて微笑んだ。

「思生だってちゃんとみんなを救ったじゃん」

なぜだか私のほうが涙を流してしまいそうな気持ちになる。

「みんなを救ったのは空菜だよ」

思生は立ち止まった。

目の前には大きな闇。

その真ん中で一人の女の子が泣いている。

「空菜。今のあなたならあの子をどうする?」

思生は私を試すように言う。

「行くよ。」

私はそういって思生の手を引いた。

でも思生は手を振りほどいた。

「ここから先は、私は行けない。空菜一人で行って」

「なんでよ?」

思生は今にも泣きそうな顔をして首を横に振る。

怯えている?

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