長い一日。
加奈さんが私の好きな花ばかりを束ねた花束を私に差し出した。

スズラン、コスモス、チューリップ。

私の好きな花は季節も色もバラバラで統一性がない。

集めるのも大変だっただろう。

きっと、加奈さんも気を使ってくれたつもりなんだ。

今日が私の余命申告された最後の日だから。

「ありがとう加奈さん。でもちょっと私トイレに行ってきますね」

「一人で大丈夫?」

「はい。」

自分の足で立って歩くと泣きそうになる。

こんなにも自然に歩けるのに動けるのに私は死んでしまうの…?

余命申告された最後の日くらい動けなくなってしまえばいいのに…

こんなにも自然に歩けてしまったら、悲しい気持ちが膨らむだけだから。

ドアを開けると何かにはじかれたような気がした。

目を開くとそこには私がいた。

あぁ、私死んだんだ。

死ぬってこんな感じなんだ。

でも何か変。

死んでいるはずなのに私の体はまだ立っている。

そして動いている。

中身の私は動いていないのに。

「ん〜〜っ!!久しぶりに出てこられたぁ!」

━━ 喋った!?

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