長い一日。
「…わかった。
待っててね私行ってくるから」

そう言って私は歩きだした。

━━思生に頼らずにやってみせるよ





少し遠ざかった頃。
思生がなにかを言っていたけどよく聞こえなかった。



「空菜。

あなたは戻ってこれないよ。

だって時の子があなたを連れていってしまうから」


思生がつぶやいた時なにかの雫が落ちた。




その頃私は女の子のところにたどりついた。

「どうして泣いているの?」

「みんなかわらない。何度時を戻しても何もかわらない」

涙を流しているとは思えない声だった。

世界に呆れ世の中を憎むような話し方。

「そんなことないよ。あきらめちゃダメだよ」

私は笑いかけるしかできなかった。

女の子は首を横に振った。

この女の子が『時の子』なんだ。

「何もかわらないから
もう辛い現実を見たくないから
目を捨てちゃった…」

目を…捨て…た?

その言葉に不信感を抱きつつも、冷たい汗が背中をつたっていく。

私は確信した。

時の子が顔を上げる。

怖い。

「ひっ…」

うまく声をだせない。

だって時の子の目がある場所に、真っ黒な闇みたいな穴が開いていたから…

< 30 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop